私たちのチームでは、心理療法の一つである認知行動療法(CBT: Cognitive Behavioral Therapy)を用いた研究・実践・教育を行っています。

CBTとは、行動、感情、認知、身体反応を支援の標的とし、これまで実証的に効果が確認されている行動的技法(例:行動活性化、社会的スキル訓練、リラクセーション)や認知的技法(例:認知的再構成)を組み合わせることで問題の改善を図ろうとする心理社会的アプローチです。

研究 Research × 実践 Practice × 教育 Education

Evidence-based精神医学の発展には、研究・実践・教育の3要素が掛け合わせられることが重要です。CBTチームでは、この3要素を大切にしたチームを展開しています。

1)研究

(1)疼痛性障害へのリエゾンCBT研究
 CBTチームでは、整形外科とのリエゾン診療の枠組みで、集学的マネジメントの一部として、集団形式での行動活性化療法を実施し、その治療アウトカムをアンケート形式、画像評価、客観的疼痛指標など様々な側面から測定し、効果判定を行っています。

(2)集団精神療法の共通要因の探求
 集団精神療法を行う上で、グループメンバーの関係性やセラピストの暖かみなど、技法に関連しない集団療法に共通した要素が集団療法の効果を左右すると言われています。集団療法の共通要素に着目した測定指標の整備を行うことで、集団療法を適正運営するための臨床研究に取り組んでいます。

(3)その他
 他研究チーム、他大学との共同研究では、肥満、児童、うつ病の行動活性化療法、アルコールや薬物使用者への心理療法など様々な課題に取り組んでいます。また、遠隔心理学や漫画動画の利用など、利用方法についての検討を進めています。

2)実践

(1)研究チーム内での症例検討会 定期的な症例検討を行い、単一事例研究デザインやアセスメント技法について学ぶことで、学会発表や論文発表に耐えうる症例報告のスキルを磨いています。

(2)外部連携での症例検討会 研究チーム内での症例検討だけではなく、他地方の大学教員、実践家との症例検討の場を設け、議論が柔軟なものになるように取り組んでいます。

3)教育

(1)多職種連携による患者へのコミュニケーション力向上プログラム
 基礎的な臨床スキル(傾聴や共感)やCBTの理念・技法を学ぶための勉強会を、医師、看護師、心理士が協働して定期的に開催しています。対人関係プロセス想起法という方法論を用いて、医療コミュニケーションのロールプレイを撮影し、動画を見ながら即時的なフィードバックを行うことで、臨床スキルを客観視する取り組みを行っています。

★学生、研修医、その他医療系大学院の進学を考えている方へ★

CBTチームでは、上記の研究・実践・教育を通じて、精神医学へのCBTの応用について学ぶことができます。脳画像やNIRSなど、他の研究チームと協働し、グローバル・スタンダードなCBT研究を行うことができます。
実践については、海外の研究をそのまま日本の文化に適合することは難しいと考えています。CBTチームでは、日本の文化、そして福島の文化に適合したCBTの実践について、症例検討を通じて学ぶことができます。
病院医療では、多職種連携は必須です。医師、心理士、精神保健福祉士を中心として、看護師、作業療法士、薬剤師など、幅広い職種との協働のもと、チームを運営しています。色々な角度からの意見を取り入れることで、研究や実践を円滑に、柔軟に進めることができ、幅広い角度からCBTを学ぶことができます。
学生や研修医の皆様ももちろん、心理職など色々な職種の医療従事者の方に興味を持ってもらえると嬉しいです。
(文責 青木俊太郎)