主な研究内容

 私たちは、福島県立医科大学神経精神医学講座を中心として展開している死後脳バンク(http://www.fmu-bb.jp/)に集積されているサンプルを用いて死後脳研究を行っています。
以下、現在継続中の主な研究内容についてご紹介します。

まず、統合失調症死後脳におけるDARPP-32の異常の検討というテーマをご紹介します。

 DARPP-32はDopamine and cAMP-Regulated Phosphoprotein, 32KDの頭文字をとった略称です。この分子は、主に脳で発現し、またドパミン系とグルタミン酸系の神経伝達物質システムを調節する主要分子として働いています。私たちはDARPP-32が統合失調症の死後脳で健常者と比べてどのような違いがあるのかを免疫組織化学という方法で調べていくつかの知見を報告したり、線条体(被殻、尾状核)におけるDARPP-32タンパクの発現とドパミンD2受容体遺伝子(DRD2)におけるTaq1A多型との関連を検討したりしています。また、DARPP-32 蛋白質の機能をDARP-32蛋白質のリン酸化状態に依存して調節する可能性がある因子として Pin1 に着目し生化学的手法により機能解明を進める予定です。

 次に、統合失調症脳内タンパク質群の発現解析というテーマですが、私たちは統合失調症死後脳に発現しているタンパク質の多項目同時測定を進めています。統合失調症群と健常対照群の死後脳凍結組織における発現量の差異を、質量分析法による標的および網羅的なタンパク質定量解析法を用いてスクリーニングを行いました(下図上)。その結果として統合失調症で異常な変動がみられたタンパク質について、死後脳組織を用いて免疫染色を行い、実際の組織内分布の差異を観察しました(下図下)。

その他、統合失調症死後脳における脂質代謝解析というテーマで、
統合失調症脳の脂質異常に関して極微量の分子も測定できる最先端の手法を用いて検討しています(下図)。

学生、研修医の皆様へ、チームからのメッセージやアピールしたい点

 ● 精神疾患の死後脳研究に興味のある方はご連絡をお待ちしています!
 ● 私たちは年一回程度上記の成果を発表するために国際学会に参加しています。
 ● 海外での研究交流に興味のある方、特に、留学希望者は大歓迎です!