TMSチームは、経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation : TMS )を用いた実験を行っています。

 磁気刺激法は1985年にBarkerらによって報告されてから、非侵襲的にヒト中枢神経の刺激を行う方法として活用されています。磁気刺激の原理は、刺激コイルにごく短時間に大きな電圧をかけ急速に電流を流すと、その磁束変化に応じてコイルに流した電流と逆向きの誘導電流がコイルの周りに誘導されます。この誘導電流によりコイル直下の生体を刺激するのが磁気刺激法の基本原理です。脳を刺激する方法としては、他に電気刺激もあります。しかし頭がい骨は非常に高い抵抗をもっているため、電気刺激を行う場合強い電圧を必要とし、その際痛みも伴います。一方で磁気刺激法はこれらの痛みが少なく、低侵襲な刺激方法です。

 経頭蓋磁気刺激は、脳神経科学の領域の研究、検査、治療に使用されています。精神科領域では、うつ病に対する治療として使用されており、他には統合失調症の幻聴に対する効果への研究などにも使用されています。

  現在TMSチームでは、矢部教授だけでなく、当院神経内科の先生方の御指導も頂きながら、磁気刺激の事象関連電位への影響を研究しています。TMSチームは厳しくも的確かつ暖かい指導を矢部教授らからうけることができるだけでなく、講座内では他の研究チームとも協力し合う体制がとられています(写真3は矢部教授がTMSを受けている様子です)。 経頭蓋磁気刺激は神経生理学的な研究に使用されるだけではなく、治療にも有効な方法と考えられています。基礎研究だけでなく臨床的な研究にも興味がある学生・研修医の方々は是非一度見学にいらしてください。