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海外留学報告

福島県立医科大学医学部 神経精神医学講座
三浦 至

 2013年4月から2014年3月まで,平成24年度日本臨床精神神経薬理学会海外研修員として,また公益財団法人星総合病院の海外留学助成を受け米国NYにあるZucker Hillside Hospital(ZHH)に留学してきました.ZHHはclozapineで有名なDr. John M Kaneがchairmanを務める病院です.ZHHはNorth Shore LIJ (Long Island Jewish) Health Systemという医療システムに所属する精神科病院で,この医療システムは全米でも屈指の巨大な医療機関の一つです.ZHHはLong IslandのQueens地区にあり,Manhattanのような大都会のイメージとは異なる郊外の病院です.私は家族とともに一家4人で渡米し,長男の通うNY日本人学校がお隣Connecticut州のGreenwichにあったため,NYC郊外のWestchester地区Mamaroneckにアパートを借り,毎日車で高速を利用して片道40分ほどかけて病院まで通っていました.途中Throgs Neck BridgeというBronxとQueensとを結ぶ橋を通るのですが,この橋からはやや遠くにManhattanの摩天楼が見え,毎日天気とともに異なる眺望を楽しみました.
 ZHHはDr. KaneのclozapineのRCTに代表されるように主に統合失調症の臨床精神薬理研究を活発に行ってきた病院であり,臨床薬理以外にもgenetics, neuroimaging, first episodeなどの研究チームがありそれぞれ精力的に研究を行っています.研究部門のdirectorはgeneticsチームのDr. Anil K Malhotraであり,私は留学中に薬理遺伝の研究を行いたかったことから,彼のアドバイスを受けつつ直接的には臨床薬理チームのDr. Christoph U Correllに直接指導を受けました.Dr. Correllは抗精神病薬の代謝性副作用の研究で有名ですが,systematic reviewやmeta-analysis(MA)のエキスパートでもあり,統合失調症の薬理遺伝に関するMAをやりたりという私の希望を快く受け入れてくれました.テーマに関しては彼と話し合いながら決めましたが,薬理遺伝のMAは①抗精神病薬による遅発性ジスキネジアと脳由来神経栄養因子BDNF Val66Met遺伝子多型との関連,②抗精神病薬による高PRL血症とDRD2遺伝子多型との関連,また臨床薬理学的研究としては③統合失調症におけるoxytocinの臨床効果についてのMAもボスのすすめで行いました.私個人の研究以外にもDr. CorrellのチームミーティングやJournal Club,国内外の研究者を招いて行われる各種レクチャーに参加しました.レクチャーでは渡米前に私が留学先の候補として考えていたトロント大学のDr. James Kennedyの話を聞く機会にも恵まれました.
 仕事を離れては週末にGrand Central Terminalから多くの美術館や博物館,その他Manhattanの名所を巡り大都市NYを満喫するほか,郊外の公園などでのんびり過ごしたり車でWashington DCやPhiladelphia, Bostonなどに足を延ばしたりして楽しみました.中でもMLB観戦にはよく出かけ,Yankee Stadium, Citi Field(NY Metsの本拠地)のほかポストシーズンにはBostonのFenway Parkに行き,上原がセーブを挙げRed Soxのリーグ優勝が決まった試合を生で観戦しました.ポストシーズンはレギュラーシーズンと違った緊張感があり,またBostonという土地柄もあり非常な盛り上がりでした.またYankee Stadiumで黒田とダルビッシュが投げ合った試合では,9回裏にイチローがサヨナラHR(walk-off HR)を放ち,劇的な幕切れを見ることができました.
 1年間の留学期間はあっという間に過ぎ,今年4月からは福島医大に戻っています.ボスとの仕事がまだいくつか残っておりこれから完成させなければなりませんが,同時に留学中の経験を今後の福島での研究につなげていきたいと思っています.最後になりますが,このような素晴らしい機会を与えていただいた皆様に厚く御礼申し上げます.

Miura I, Zhang JP, Nitta M, Lencz T, Kane JM, Malhotra AK, Yabe H, Correll CU. (2014) BDNF Val66Met polymorphism and antipsychotic-induced tardive dyskinesia occurrence and severity: a meta-analysis. Schizophrenia Research 152: 365-372.

(写真の説明)
1. ZHH, The Behavioral Health Pavilion
2. Dr. John M Kaneと,日本からAlbert Einstein College of Medicine (NY) 留学中の先生方とともに
3. Manhattan, Midtownにて

2014年同門会誌掲載

 

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